Special Interview 02
Special Interviewどっちぼーい
「プロポーズ」のdaipo氏が贈る、 盛り上がり必至のパーティーゲーム 『どっちぼーい』堂々完成!
daipo(ゲームデザイナー) × こだまじゅんじろう(ClaGla) × センバ ノブユキ(ClaGla)
「たった今考えたプロポーズの言葉を君に捧ぐよ。(以下、プロポーズ)」の ゲームデザイナーであるdaipo氏の新作ボードゲームが ついに11月14日の「ゲームマーケット2020秋」から発売開始となります。 daipo氏とClaGlaの2人が共に「自信作」と口をそろえる 「どっちぼーい」とは、どんなゲームなのか? 3人に詳しく語ってもらいました。
daipo氏の”好き”が詰まっている。
ついに待望の新作が発売されます。
daipo 「プロポーズ」の次作ということで、ちゃんと面白いものを出さないとまずいなという気持を抱きながら、一生懸命作りました。
相当な話題になると思います。
daipo んー、そうなるとうれしいです。
まずはどんなゲームか教えていただけますか?
daipo はい、これは賭けゲームになります。親プレイヤーがピラミッド状に並べたカードの質問にYESかNOで答えていき、他のプレイヤーはそのピラミッドの頂点から一番下まで、親がどういうルートを通って、最終的にどのカードに行き着くのかを予想して賭けるゲームです。これで伝わるかな?
フローチャートのような感じ、ですかね?
daipo そうですね。僕も最初はトトカルチョとフローチャートを合体させて「トトカルチャート」って名前を付けていました。ただ、トトカルチョってサッカーにしか使わない用語ですし、フローチャートっていうのも、あまり一般的な言葉じゃないかなと思いまして。それで、どっちに行くか賭ける「どっち」と、ゲームボーイの「ぼーい」を取って「どっちぼーい」にしました。「ぼーい」には、そんなに深い理由はなくて、個人的に語呂が良い感じがして好きなんですよね。
「どっちぼーい」は、どのようにして生まれたゲームなんですか?
daipo きっかけはこだまさんの家でプレイした「キャメルアップ」というボードゲームでした。それが賭けゲームで、すごく面白かったんです。「キャメルアップ」はラクダのレースの順位を予想するゲームですが、自分はパーティーゲームづくりを目指しているので、もう少しパーティー要素をもたせられないか、たとえば賭けの対象を”価値観”にできないかと発想して生まれたゲームです。そして、友達のことをどれだけ知っているかを賭けの対象にしたら面白いんじゃないかと考え、最終的にこういうカタチになりました。
「プロポーズ」とはまた違う世界観のゲームですよね。
daipo はい、基本的には遊ぶことでみんなが仲良くなれる、みんなで笑い合って相手を好きになれるようなゲームを作りたいという思いがあり、その根本は変わりませんが、プロポーズとはどう違うアプローチができるかって考えて作りました。その中で今回は好きなモノを詰め込んだ感じです。
好きなモノを詰め込んだというのは、具体的どの部分に?
daipo そうですね、たとえば僕はストリートカルチャーが格好よくて好きなんですが、今回のアートワークは、そういう壁に落書きやペイントされていたり、ステッカーが貼られているイメージで作っています。
アートワークはかなり自由に作られている?
センバ アートワークに関しては、僕らからは何の指示も出していないです。
daipo ロゴが読みづらいという意見をいただいたので、そこは修正しましたけど、ほとんど何も言われていないです。後悔しないよう、好きにやらせてもらいました。
アートワークには、さまざまなキーワードがちりばめられていますよね。
daipo 「YES」「NO」といった分かりやすい言葉を入れて、うっすらとですがゲームのニュアンスを伝えようとしています。ほかにも「男性」の象徴として火星の神様のマルス、「女性」の象徴としてヴィーナスを描いて男と女を表現していたり、ご飯とパン、犬と猫などを描いていたりします。
センバ これは?
daipo ニワトリですね。これは「ビーフ or チキン」をイメージして描いたモノで、どこかに牛の絵もあります。
センバ こっちは?
daipo UFOです。UFOを見たことがあるかどうかを聞く質問があるので入れてみました。
こだま daipo氏のサインもここ(箱の側面)に入ってるよね。
daipo はい。「プロポーズ」のヒット以降、求められる機会が増えて作ったサインも入れています(笑)。
カードの一枚一枚にまでこだわりを。
このゲームの箱も「なんだって授賞式」と同じ「プロポーズ」の1.5倍サイズなんですね。
daipo そうなんですよ。まさかの「どっちぼーい」も入らなかった問題(笑)。
こだま 場パネルのサイズを小さくしたりしたんだけどね。
daipo 狭い場所でも遊べるように小さめにしましたが、チップなど手に持って楽しいサイズというのもありますから、このサイズが限界でした。
当初の想定と完成品で結構変わったことがあったのですか?
センバ そんなに変わってないよね。最初から面白くて、すごく盛り上がったし。
こだま 「ドッチ券」も最初から「ドッチ券」って名前だったしね。daipo氏の作品はテストプレイ用に初めて持ってきた試作品の段階で、完成品のようなクオリティに仕上がっているんです。それが本当にスゴい。
daipo 遊んでもらうからには、なるべく本番に近い状況で遊んで欲しいという思いがあるんですよね。だから、コピー用紙に殴り書きしたようなモノではなく、印刷したり、できるだけ完成品に近い状態のモノを作ってテストプレイしてもらうようにしています。今回は盛り上がりもよく、制作もスムーズでしたが、こうしたらもっと遊びやすくなるんじゃないかという部分には結構時間をかけました。
遊びやすさ?
daipo テストプレイ用に作った試作は、質問カードにナンバーが無く、対応表を見ながら賭ける仕組みだったので直感的に遊びづらかったんです。他にも場パネルは当初オモテだけでしたが、ひっくり返して倍率が変わるようにしました。あと、スペシャルチップも途中から追加したアイテムで、子プレイヤーがYES・NOをある程度コントロールできるようにすることで、ゲーム性を高めています。
質問の数がものすごくありますよね。
daipo はい。質問カード自体は162枚ですが、裏表で違う質問になっているので、全部で324問あります。
それだけの質問を考えるのは相当大変だったのでは?
daipo 大変は大変ですが、300くらいならそれほどでもなかったかな。遊んでいくうちに質問がネタバレすると面白くないので、できる限り増やしました。むしろ、質問の数より字数に制限がある方が大変でしたね。どの質問も正確に内容が伝わるよう、言葉を一つ一つ精査しました。
こだま 「プロポーズ」もそうですが、daipo氏の紡ぐ言葉のセンスって、柔らかくて優しいんですよね。人が傷つくような言葉が基本的に入っていない。
daipo そうですね。誰かが傷ついたり、嫌な思いをするような質問は省きました。質問はかなり最後まで調整しましたね。
質問はどうやって作っていったのですか?
daipo まずはインターネットを使って、「初対面の人同士でも盛り上がる質問」、「鉄板の質問」などを調べまくりました。その上で、趣味や休みの日に何をしているかなど、僕が初対面の人によく聞く質問だったり、「幽霊を見たことがあるか」など、どっちの回答が来ても会話が広がるようなものを増やしていきました。
血液型を書く欄があります。
daipo そうです。初対面同士で遊んだときに相手のことって全く分からないじゃないですか。そんな状態でこのゲームが成り立つのだろうかと悩み、ある程度の型にハマったものがあれば予想できるのではないかと思い、日本で昔からある血液型や性格判断を意識した要素を組み込みました。
こだま 言葉でいうと、僕は個人的に「ドッチ券」や「Dウォレット」といったアイテムや、場パネルの”ソウルメイト”や”超友達”といった言葉のネーミングセンスの巧さもスゴいなって思いますね。
daipo そこは、なにか引っかかる感じのモノにしたいと思って結構考えました。「Dウォレット」にはプレイヤーの名前を書く欄を設けたのですが、そこも初対面同士で名前を呼び合えた方が仲良くプレイしてもらえるんじゃないかと思って加えました。
自分を知ってもらう醍醐味。
このゲーム、知っている人同士が有利に思いますが、実際にはそうではないですよね。
daipo そうなんですよね。全員と初対面の人が意外と1位になったりします。
こだま この間も人気ボードゲーム「ボブジテン」を制作しているゲームサークルのつかぽん氏が札幌に来られて、ClaGlaのメンバーと一緒にテストプレイをしたのですが、つかぽん氏が一番点数を取ってました(笑)。
それはすごいですね。
daipo ある程度、人間の観察眼といいますか、プロファイリング的な部分で乗り切れる部分があるのかもしれませんね。あと、こだまさんはClaGlaで一番当てやすいです。
こだま 僕としては、ここは裏をかいた!と思っても全員に「どっちぼーい!」と当てられたりして。その悔しさったらないですよ(笑)。
ゲームデザイナーとして、コツのようなモノはある?
daipo コツといいますか、勝ちにいくなら前半はスペシャルチップを貯めて、後半の賭け時に一気に使って賭けることですね。重ね賭けができるので、「×2」を3つ使ったら「×8」になります。「×16」のところに「×8」のスペシャルチップを使ったら、一気にとんでもない額を稼ぐこともできますので、勝負所を見極めるのがポイントだと思います。…とはいえ、そんなに勝ち負けを気にせずに楽しんでほしいのですが(笑)。
確かにこのゲーム、一緒にやった人とつながりのようなものを感じる満足感があり、最後に所持金が「0」になってもスカッとします。
こだま 親プレーヤーのことを知るために子プレーヤーが最初に質問カードの質問を一人1問ずつしますよね。あれ、すごくいい。
センバ 親の事を知れるのが楽しいし、さらに自分が親になったときには、みんなに自分のことを知ってもらえる。そこもうれしいんですよね。
daipo このゲームを通して、相手のことを知って好きになって欲しいという思いがあるので、親プレーヤーの人となりが分かるように工夫をしました。何かで見たのですが、人って自分語りをしているときがすごく気持ちいいらしいんです。
センバ 確かに自分が親の番はずっと気持ちいいかも。
daipo ぜひ、たくさん自分のことをしゃべって欲しいです。
こだま このゲームは全く知らない初めての人とやっても楽しいですし、よく知っていると思っているはずの仲が良い人、距離が近い人とやっても面白いです。僕も先日、母親とやってみたのですが、「うそ!? 母さん、そんなこと思ってたの!?」って発見がありました(笑)。
目指せ、名誉の称号「どっちぼーい」。
一度やると面白さにハマりますし、どんどんいろんな人とやってみたくなる中毒性の高いゲームですよね(笑)。さて、いよいよ11月14日に開催される「ゲームマーケット2020秋」から発売されます。daipoさん自身、どのようなことを期待していますか?
daipo 「プロポーズ」で遊んでくれた人もがっかりすることなく、たくさんの人に楽しく遊んで欲しいです。そして、個人的にはdaipoは「プロポーズ」だけでなく、面白いモノをコンスタントに作れるゲーム作家だと世間に知ってもらえたらうれしいです。
ClaGlaにとっては、どんなゲームになりそうですか?
センバ 僕らもClaGlaのゲームというと「プロポーズ」が代表作品として挙げられますが、さらに選択肢が広がる、面白いゲームができたと期待しています。
こだま 新しいゲームは出ないんですか?とよく言われるのですが、その中でも本当に自信を持ってめちゃくちゃ面白いですといえるゲームができたよね。
センバ 「コトバ―テル」から1年間何もリリースできず、ようやく新作を発表できるということでホッとしています。
こだま そうだよね・・・、長かった。
まさに満を持しての作品ですね。
daipo そうです、自信作です。
こだま ゲームデザイナーにとってはテストプレイが一番の地獄と言われ、何回も同じゲームをやっていると関係者も作家自体も飽きてきて、もうやりたくないと思うことがあるんです。でも、「どっちぼーい」は、テストプレイをこれだけたくさんやってきたのに、未だに飽きず、常に新しい発見があります。「プロポーズ」も「コトバーテル」もそうでしたが、飽きずに楽しくワイワイ遊べるというのは、それだけいいゲームの証拠だと思うんです。
このゲームも今後、質問カードの拡張版などが出ても面白そうですね。
daipo 今の質問カードには経験系の内容が多く、中学生や若い人たちがやるとNOしか答えられない質問が結構あったりします。そう考えると、年齢に合わせて作るのはありだと思いますね。
こだま スクール版の拡張とか面白そうだね。でも、闇雲に増やしていくのではなく、まずは1つ1つ大切に育てていきたいと思っています。
最後に、このゲームの紹介文には「トモダチを知りつくしたとき、君はこう呼ばれるだろう・・君a.k.aどっちぼーい!!!!!!」と書かれています。改めて「どっちぼーい」とは、どういう意味か教えてもらえますか?
daipo 紹介文の「a.k.a」は「as know as(〇〇として知られる)」の略なので、「”どっちぼーい”として知られる君」っていう意味になります。「どっちぼーい」とは、友達を知り尽くした人の称号、いわば”友達思いのやつ”ってこと。このゲームは、友達のことを一番知っている名誉ある”どっちぼーい”を決める、そんなイメージで作りました。
こだま daipo氏のカラーが存分に出たゲームになったよね。
daipo なんか出た感じしますね(笑)
(インタビュアー:児玉源太郎)
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トモダチのどっち、知ってる?
どっちぼーい
ゲームデザイン / アートワーク:daipo(CRIMAGE)