Special Interview 08

Sapporo Game Space
(前編)

Sapporo Game Spaceもうすぐ2周年!
「ゆこる」「ナゾグラ」振り返り座談会(前編)

きむち。(「ゆこる」店長) × クロ(「ゆこる」アドバイザー) × センバノブユキ(「ナゾグラ」プロデューサー) × こだまじゅんじろう(ClaGla代表) × Special Guest. 宮城島崇人(宮城島崇人建築設計事務所)

2020年春、札幌の中心部にオープンしたSapporo Game Space(以下、SGS)。今年の春に2周年を迎えるSGSが完成するまでの軌跡を、運営するClaGlaのこだまじゅんじろう氏、謎解き空間「ナゾグラ」をプロデュースしたセンバノブユキ氏、ボードゲームカフェ「ゆこる」の店長きむち。氏、アドバイザーのクロ氏、さらには設計を担当した宮城島崇人氏の5人に振り返ってもらいました。

実は自社ビルを建てる話もあった!?

まずはSGSを作ることになった経緯から教えてもらえますか。

こだま 僕は元々、きむちさんが働いていたボドゲカフェでアルバイトをしていたんです。で、その後、ClaGlaで謎解きのカフェを作りたいと思っていたら、きむちさんも新しいお店を出したいって話していて。だったら、お互い一緒の方が影響力も集客力も強くなるだろうし、同じ場所に構えましょうよって話になったんだよね。

きむち。 そうだね。

こだま さらに、うちは人数が少なくて運営まで手が回らないって話したら、きむちさんの方で謎解きの運営もしてくれるって話になったので、一緒に物件探しを始めたんです。

それはいつ頃の話なんですか?

こだま 2019年の8月か9月くらいだったかな。僕とセンバくん、きむちさんとクロちゃんの4人で探し回ったんだけど、どこも善し悪しがあって…。

クロ ここは良いんじゃないかって思ったら、目の前にビルが建つ予定だったりね。工事が始まるとしばらくはうるさいだろうから、ダメだろうって諦めて。

こだま 中心部から離れていたり、広さが足りなかったり、営業時間に制約があったり、なかなか条件をすべて満たす物件が無かったよね。

クロ 途中でビルを建てるかって話にもなりましたよね。

こだま ボードゲームと謎解き以外のコンテンツも一緒にやるって話が途中であったんです。で、それならいっそビル1棟を建てた方がいいんじゃないかって(笑)。

クロ いつになるんだよっていうね(笑)。

そんなスケールの大きい話もあったんですね。そこから札幌市南1条西5丁目にあるプレジデント松井ビル 地下1階にした決め手は何だったのでしょうか?

きむち。 決め手というよりも、消去法だったような気がする。

こだま やりたいことと予算がなかなか合わなくて、そういう意味で一番バランスが良かったのが、ここだったんですよね。いろいろ見た物件の中で、ここが一番街中から近くてアクセスが良かったし、地下街を使えば雨にもほとんど当たらずに来られる。それでここがいいんじゃないかって第一候補になった感じです。

「ゆこる」の設計は、遊ぶことからスタート

場所が決まってからは、どう進めていったのですか?

こだま ここ、元々はスケルトンといって内装も間仕切りの壁も設備も何もない状態だったんです。だからこそ好きなように作れるねって話していたんだけど、いかんせんそんな状態からお店を作ったことがないし、何をどうやったらいいかが分からない。それで建築に詳しくて信頼できる人が身近にいてほしいと思って、僕の大学院時代の先輩である宮城島さんに力を貸してもらえないかと相談させてもらったんです。

宮城島 立地もいいし、空間もがらんとしていて、いろいろ面白くできそうだねって話したね。

宮城島さんは声をかけられて、どのように設計していったのですか?

宮城島 まずはボードゲームをプレイしに行きました。小さいころに遊んだことはありましたが、今はやっていなかったし、ボードゲームカフェというところに出入りしたこともなかったので、どういう場所なのか知りたくて。きむちさんとセンバさんに教えてもらいながら、いろんなゲームを体験させてもらいました。

そこからイメージを高めていった感じですか?

宮城島 そのときはまだ具体的な空間のイメージってあんまりなくて、とにかくどういう楽しさがあって、どういう人との関係があってというのを純粋に1回体験させてもらった感じです。そこから、こだまさんやきむちさんがカフェとしてのノウハウをもっていて、こうしたいという思いもあったので、それらを満たす形でどう作っていこうかと考え始めました。

具体的にはどのような条件、ノウハウがあったのですか。

こだま 僕が覚えているのは、座席数を50席、そのほかに個室も必要ってお願いしたよね。

きむち。 新しいお店を作るにあたって、前のお店のお客さんが来てくれることが予想できたので、その人たちを受け入れる席数が欲しかったんですよね。雰囲気は変わっても、前と同じ空間が最低限あって、前と同じ遊び方、使い方ができる場所にしたかったので。

宮城島 ノウハウについては、コート掛けや荷物置き場があると手ぶらで席を移動して楽しめるとか、お店の人だからこそのアイデアをたくさん教えてもらいました。2人とも、ボードゲームが得意な人たちが入り浸るお店というより、もっと間口を広く、初めての人もフラっと寄れて自然に楽しめる雰囲気にしたいと明確な思いがあったので、イメージを高めていきやすかったです。

「ゆこる」は、どのようなイメージで設計されたのですか?

宮城島 実際に体験させてもらって、ボードゲームってローテクなボードと小さなアイテムだけで、テーブルの上が宇宙になったり、砂漠になったりするのがすごく面白いと思ったんですね。だから、そのことを彷彿とさせる場所を作れないかって考えました。

こだま どういう空間になるのかってプレゼンしてもらったのですが、その1枚目のスライドが映画「トゥルーマン・ショー」の画像でしたよね。あれは衝撃でした。

宮城島 現実とフィクションの世界が一瞬でワープする感じが似ていると感じたんですよね。「トゥルーマン・ショー」の映画の方はポジティブじゃないんだけど、現実とのつながりがありながら世界を飛び越えることができるのが、ボードゲームカフェなんじゃないかってプレゼンした記憶があります。

こだま だから「ゆこる」はハリボテのようなものに囲まれていて、いわゆる壁というものがないんです。

確かに言われてみると、ピンク色の部分がハリボテのようで、セットみたいに感じますね。

宮城島 そうなんです。ここにあるのは「トゥルーマン・ショー」での悲しいハリボテではなく、居場所を作るためのハリボテ。ゲームをするときはハリボテの内側がオモテの世界になって、現実世界がウラになる。そんなオモテとウラが入り交じる曖昧でミステリアスな空間でゲームができたら面白いかなと思って提案させてもらいました。

クロ 「トゥルーマン・ショー」の話は分かりやすかったですね。

センバ オシャレなことを考えるなーって思いましたよね。

きむち。 最近は体験型の遊びやごっご遊びがすごく流行っていますが、まさにぴったりの空間ですよね。来る人たちにも「ここは特別な空間で、セットの中だから恥ずかしがらずに遊んでいんだよ」って言っていますし、なんて素敵な空間なんだって日々感激しています。

宮城島 ゲームの世界と言っているのに、棚を支える支柱が見えたりしたらゲンナリしちゃいますよね。それにいくら建築模型でキレイに見えても、現実の空間は厚みや距離などのちょっとした寸法でイメージした見た目と変わりますし、使い勝手も違ってきます。そうした空間のディティールは最後までかなり詰めてやりました。また、家具も既製品ではなく、この雰囲気に合ったものを造作させてもらいました。皆さん、無駄なことはしないけれど、良くなるんだったらちゃんとお金をかけようというスタンスの人たちばかりで、いろいろとこだわらせていただきました。

「ゆこる」とつながりを感じる別空間「ナゾグラ」

話の雰囲気から察するに、「ゆこる」の設計はとてもスムーズだったのですね。

宮城島 そうですね。ただ、「ナゾグラ」の方は、ギャラリーでもイベントスペースでもない、もっと新しいプログラムということで、なかなかイメージしづらいところがありました。

センバ 「ナゾグラ」はやることが具体的に決まっていなかったですからね。ここで謎解きゲームをする予定だったので、いろんな舞台やシチュエーションを作れるよう真っ黒い空間にして、壁とか天井にいろんなものをくっつけられるようにして欲しいとお願いしまして。

こだま 「ナゾグラ」の方は階段で区切られた場所にあって、すごい隠れ家な感じがするよね。

センバ 「ゆこる」はピンクで、黒いところからは「ナゾクラ」。2つの空間にはトビラがなくて、色で分けてもらっていて、壁の高さも斜めになっていたりします。

宮城島 「ゆこる」と同じくハリボテの中にあり、想像力を働かせる余地をもたせたかったので、ここから部屋が違う感じになりすぎると面白くないと思ったんですよね。かといって、境界線がなさ過ぎるとお客さんが混乱しちゃう。それで室内の形状や色を使って2つの空間を分けるように考えました。

センバ おかげで不思議な感じのある個性的な空間にしてもらえたとうれしく思っています。

ClaGlaのお二人は「ナゾグラ」のどんなところが気に入っていますか?

センバ 僕は看板ですね。黒い背景に黒い看板を付けて、光で形が分かるようにして欲しいって結構具体的にオーダーしました。イメージ通りに作ってくれて、すごい気に入っています。

宮城島 それは良かった!

こだま 僕はバックヤードの扉が気に入っています。

きむち。 隠し扉みたいになってるよね。

こだま そう。あの扉、押すと簡単に開くんだけど、取っ手がないから知らない人はただの壁だと思うし、開けられない。図面の段階ではどうなるのかよく分からなかったんですが、完成したのを見て、なるほどって感心しました。

宮城島 あそこは壁を見せたかったのに、どうしても扉を付けなきゃいけなくて。それでドアだと分からないようにしたくて、壁の一部が開くような感じにしたんですよね。

みんなの夢や希望を詰め込んだSGSが完成

「ゆこる」の方は、どんなところが気に入っていますか?

クロ 僕はゲームによって暗くした方が盛り上がるものもあり、照明を調光できたらいいなと常々思っていたので、それが実現されていてうれしかったです。

きむち。 私のお気に入りの場所は、全部!

宮城島 全部気に入っているなんて言われることないので、すごくうれしいです。

きむち。 中でも海外のゲームカフェで見たホワイトボードの壁を個室に造作してもらって、そこは特に気に入っています。

宮城島 写真見せてもらったんですよね。ただ、普通にホワイトボードを置いてしまうと現実感が増してしまって、ミステリアスな空間と相反してしまいます。そこで、きむちさんに教えてもらった壁をホワイトボードにする方法を採用して、よりホワイトボード感を出さないようにするにはどうしたらよいかを検討して、一見ホワイトボードには見えない木目調の塗装に仕上げています。

きむち。 とても気に入っています。それとゲームを置く棚も既製品だと奥行きが深すぎたりするのですが、奥行き40cmのゲームがキレイに置けるように造ってもらってうれしかったです

こだま これだけの広さがあればしばらく埋まらないと思っていたら、速攻埋まったよね。あれはビックリした(笑)。

宮城島さんはいかがですか?

宮城島 そうですね。全体のスケール感や「ゆこる」と「ナゾグラ」の空間のつながり方などはまさにイメージした通りに仕上がって、すごい良かったと思っています。建築は完成してからがスタートみたいなところがあり、長く使ってもらうことでお店の味も出てくると思うので、これからどうやって使われて、成長していくのかをとても楽しみにしています。

こだま 宮城島さんも含めて、みんなで夢や希望を持って「こういうお店にしたい」「こういうことをやっていきたい」っていろいろ考えて作ったSGSだったんですけどね。ついにお店が完成して、「やるぞー!」ってなったときにコロナですよ…。当初考えていたことができない部分が出てきたり、人が集まる空間を作ったはずなのに人を集めちゃいけないっていうジレンマを我々はそこから抱えることになります…。(後編に続く)

(インタビュアー:児玉源太郎)

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